奇貨居くべし。
ベラルーシのL大統領にとって、ワグネルのP社長はそんな存在だろう。
L大統領は、おそらくワグネルを手元に置き、動かそうとし、何かを画策しているように思われる。
彼ほどの野心家であるから、ニュースで聴くほど「ロシアのP大統領に逆らえない」わけがないだろう。
逆らえないのは、国力がない、力の差が歴然だからであって、忠誠を誓っているわけじゃぁない。
そして、そんな「力関係」を覆す状況が、今まさに目の前にあるわけだ。
ロシアが弱体化し、ロシアと反目する武装集団が手元にやってきた。
そして、ベラルーシ自体は、ロシア側の国として認識はされているものの、今回の戦争でウクライナへは侵攻していない。
なので、対立関係にあるとは言っても、ウクライナからの恨みは限定的であると考えれば、将来的にウクライナと和解の道がまだあるだろう。
そして仮に和解をすれば、ベラルーシ/ワグネル連合とウクライナとで、ロシアに対し掎角の位置関係が成り立つ。
つまり、ロシアと、立場を逆転する千載一遇のチャンスだ。
思えば、ベラルーシは核共有をするということで、ロシアの核兵器が配備されているが、そこで珍しく、L大統領は反抗をしている。
核兵器使用の判断・権利は、ベラルーシにある、と言って聞かないのである。
それが可能か、ということは置いておいて、このような反抗をするのは、らしくないと思う。
そんなわけで、今のベラルーシには、精鋭部隊があり、核兵器があり、目の上のたんこぶは自らの侵攻戦失敗により弱体化している。随分と都合のよい状況になってはいないか。
実は前々からL大統領が青写真を描いて、この状況を画策してきたのだとしたら、相当の策士であろう。
読めないのは、NATOとの関係をどうするか、というところと、ポスト・ロシアである。
一説に、L大統領は強いソビエト連邦の復活を望んでいるともされるところを見ると、彼の野望は、ソビエトを復活させ、自身がトップとなるのか、重職につくのか、というところだろう。
ロシアを滅亡に追いやるイニシアチブをL大統領が握ったと考えれば、仮にソビエトが再建されれば、彼がトップまたはかなりの重職につくだろうことは想像に難くない。
しかし、そうなるとNATOとは敵対することになるので、現状、近づくわけにもいかないし、となると、味方はまわりにいない。
そして、かつての連邦構成国はNATO入りしているところも多く、ウクライナも早晩、NATOになる。すると、往時を凌ぐような、強いソビエトの復活はないだろう。
ソビエトは諦め、ベラルーシとロシアを併合し、自身が君臨する、という形を求めるのだろうか。
さて。
途中からは小気味のよい妄想となってしまったが。
彼にはもうひとつ懸念があって、長く独裁者として君臨しているので、ロシアの後ろ盾がなくなると、とたんに政権が倒されるかもしれないほど、国内で不人気であることだ。
ロシアより先に、自分が失脚するかも知れないのである。
そして、忍び寄る、寿命というリミット。
今回の戦争は、どうも老人達の“見果てぬ夢”が、元凶のようでもある。