昔読んだ歴史小説に、冴えない役人が出てきました。何を聞いてもまともな返事が出来ず、当たり前の雑務程度しか出来ない。
しかし、外に出ると、急に頭が回りだし、能弁になり、国家の大計すら語れるようになる。
外、というのは、建物の外です。外交の場とか、そういうわけではない。
なので、その物語の主人公である上司は、何か相談事があると、彼を馬車に乗せ、外に連れ出し、馬車の上で意見を聞いたとか。
まぁ、小説での話なので、本当かどうかは知りません。
でも、こういう人、けっこういるのではないでしょうか。
大計を持っていながらも、がんじがらめの環境で、声を発することもできないとか。
素晴らしい才を抱きながら、下っ端役人として暮らしているとか。
会社の「中」という場所は、一部の人にとっては檻の中のようで、これは、人間関係や組織といった、目に見えない束縛も含みますので、より一層でしょう。
なので、その小説の主人公のような上司がもしいたら、救われる人は多いだろうな、と感じます。
前の職場ではうだつが上がらなかったのに、今はイキイキと活躍しているとか、独立起業したら化けたとか、そういうのは、まさにこういう素質の人だったのでしょう。
問題は、自分ではそこに気付くことが難しいことでしょうね。
いつも「中」で仕事をしていれば、そんな自分に気付くことすら難しいでしょう。
自分の「うだつ」が上がる場面が実はある、ということを知らずに過ごすケースも多いものと思われます。
中と外が逆の人もいるだろうし、前線と後方とか、対照的な立場は幾つもあると思います。
こういう物語を読みながら、自分を慰めております。