日本は、少子高齢化問題に何十年も前に気付いていながら、それを防ぎませんでした。
防げなかった、と表現すべきか、防がなかった、と表現すべきかは、人により意見の分かれるところかと思いますが、僕個人は、防がなかった、という表現が合うと思っています。
何十年も前から真剣に対策をした世界線が別にあるとして、それでも防げなかっただろう現在、ということも当然、あるとは思います。ただ、この何十年をウォッチしてきた身としては、では国が本気で悩み、考えてきたかというと、そのようには見えないかなぁ、という感じですね、今いるこの世界線では。
国家百年の計、という言葉があります。
ですが、裏を返せばせいぜい百年です。人の一生ぐらいの時間です。
さらに、国家百年の計など、誰もが立てられるものでもなく、歴史に名を残す偉人クラスの話でしょう。
偉人が百年なのであれば、凡人はせいぜい十年とか二十年とか、そのぐらいを見つめるのが精いっぱいで、見える範囲のことで一生懸命になるのが関の山、ということなのかも知れません。
だから、少子化が進んで人口が減っちゃうよー、老人ばっかで人口のわりに生産性のない国になっちゃうよー、成長がなくなるから衰退しかしないよー、と、理屈ではわかる危機感を、日本は何十年も前から持ってはいたのでしょうけど、なんせ過去から今までにその現象の経験がなく、想像が難しいから、凡人にはピンとこないわけで。
そのくせ、目先のことではさかしらに「国家百年の計」とか言って、何億円、何兆円とお金を費やし、何十年もかかるインフラ工事だのが続々と立案されていき、さも「未来のために仕事をした」つもりになっています。
いや、それが無駄とは思っていません。
ただ、国家百年の計は良いとして、その百年後の日本がどんな国になっているのか、という、具体的なイメージを持って言っているのかどうか、というのが問題です。
何十年もかけて、それが完成した頃には日本の人口が半分になっている可能性があります。
せっかく便利になっても、利用する人がいない国になっている可能性があります。
自分から見える範囲の「今」を単純に延長した「未来」を想定し、計画されている可能性があります。
例えば。
以前にブログに書きましたが、人口が減っていき、現役世代、若手世代が激減している昨今の日本において、交通渋滞緩和のためにバイパスなどの道路をバンバン作ることに、生産性をあまり感じないんですよね。
すべてが完成し、今よりも利便性が2倍にも3倍にもなる道路網が構築されたとしても、そのころには人口は減少していますから、当然、自動車だって減っていませんかね?
別に道を増やさなくても、渋滞は解消され、従来の道で充分だったりするんじゃないでしょうか。道路を走る車が減る、という理由で。
下手すれば、かつては街があったが、今は無人となってしまった土地、なんてのも発生すると思います。過疎化だって、少子高齢化と共に、過去から今でも、問題としてあるのですから。道路網が完成した頃には「無人の荒野に伸びる道」が方々にあることになります。
まぁ、わかりますよ。道を作るのは、交通渋滞の解消とか、速達性の改善とか、そんな耳障りのいい理由ではない要素が多分にあることは。
大人の世界の話ですしね。ただ、ここではその話は主旨ではないので割愛します。
そして、似たような現象が起きているテーマは、他にもあると思います。
例えば、国の借金問題なども、僕には詳しくわかりませんが、百年後にどうなっているか、百年後にはどういう世界になっているか、ちゃんと把握して論じられているのかどうか。
よく「未来にツケを回しているだけだ」という言葉を聞いたりしますが、その言葉自体は良いとして、その「ツケが回ってきている未来の日本」が、どういう国になっているのか、どういう状況になっているのか、具体的なシミュレーションはされているのか、ということが大事ですね。
ただ、僕が見ている限り、十年、二十年前には、口にすることさえ憚られたタブーなども、今では論じることが出来る環境になっていたりします。
せっかくですから、ちゃんと百年後の日本をシミュレーションして、より理想の未来に近づけるために今、何をやるべきか、という風に考えていく必要性があるのではないでしょうか。もちろん、大人の事情を優先していては、結果は今までと変わりませんけどね。
不況だから、収入が増えないから、結婚できない、子どもを産めない、なんて言いますけども、もっと大前提に、日本の将来が暗澹たるものだから、という理由があるような気がします。
今、自分のもとに授かった子は、おそらく、自分よりも苦労する。今でさえこんなに厳しいのに、もっとシビアな環境で暮らすなんて、かわいそうだ。
せめて、今が辛くとも、生まれた子が社会人として日本を支える頃には、日本が今よりも幸せな国になっている、という観測が持てれば、もう少し違うのかも知れません。