ばばん、ばばん、と、子どもが声をあげながらよちよちと歩いている。
まだ、喋り始めて間もないだろう、という男の子だ。
ここは、私の実家付近、ガード下の歩道。
彼が「ばばん」と言っているのは、頭の上から響く、電車の走行音だ。
地域柄、自動車よりも電車で移動する人が多いだろう場所なので、おそらくこの子も、日常的に電車を見ていて記憶に残っているのだろうし、乗り物に興味がある子なら、率先して記憶したのだろう。
私自身、子どもの頃は乗り物好きだったこと、実家が線路沿いにあったことで、やはり電車の走行音はあっという間に覚えた。
また、最寄り駅が待ち合わせや通過待ちをする駅で、線路が離合するポイントが多く、いつしかポイントの通過音も覚えた。
また、電車をホームで待つ間も、ポイント部分をじっくり観察し、車輪のフランジが乗り上げることなくスムーズに電車を往来させる線路の作りを学び、小学校に上がったぐらいには、ポイントを絵で描くことができた。
見かけたあの子が、将来も電車好きになるかはわからないが、ただ、こういう環境音のような音を覚える、というのは、観察眼があると言える。また、リズムもばっちりだったので、意識して聴き込んでいるところが感じられる。
「元電車好き幼児」が、見込みある現役電車好き幼児を発見した瞬間の話である。