kekeの考えること

こういうことを考えてる人もいるんだなぁ

はてなブログ「今週のお題」

今週のお題「人生最大のピンチ」

 

 

ピンチというのとは少し違うが、同じようなシチュエーションで、かつてない焦りのような感情に襲われたことが、この2年ほどで2回ほどある。

 

とはいえ、追い詰められているというわけでもなく、ただ、自分にはあまりないシチュエーションだったため、ちょっとした異世界感があったというお話。

 

 

一度は、仕事中だった。

 

医療機関に訪問することがあるのだが、その時は、コロナ禍による欠員の応援で、とある大病院に初見で訪問した。

 

 

駐車場自体が広く、車を停めてからけっこう歩き、建物に入ってからも、目的の場所までもしばらく歩く感じだった。

 

訪問時間自体も、すでに診療も会計も終わり、館内は薄暗く、人気もない状態。

 

訪問目的自体はとりあえず無難にこなし、さて帰ろうと廊下を歩き出してからだった。

 

 

館内は、感染防止のため全てのルートを「一方通行」にしており、通常とは全く違うルートを通らないと目的の場所に行けないようになっていた。

 

1階のロビーへはさほど苦労なく戻れたのだが、そこから先、どう頑張っても、駐車場へのルートが見つからない。

 

 

普段なら案内板の通りに行けばいいので、おそらく初見でも迷うことはないのだろうが、一方通行制限のせいでそのルートは塞がれている。

 

お手製の一方通行用案内板は、どこかが抜けているようで、指示通りに歩くと、元のロビーに戻ってしまうのである。

 

 

もはや時間外でロビーに人気はなく、歩くルート上でも、全く人に出くわさない。

 

駐車場から入ってきた時のドアの場所や方向はなんとなくわかるが、ルートは絶たれている。

 

 

大きくてキレイな病院なので、オカルト的な怖さはないものの、無人の建物に閉じ込められてしまったようで、あ、これは異空間に飛ばされたか?と、本気で思ってしまうぐらい、駐車場へのルートが見つからず、そして人がおらず、無音だった。

 

30分近くは彷徨っただろうか。

異空間ではなかった証拠に、何度も歩いた地下の薄暗い廊下で、ようやっと、清掃のオバチャンに出くわすことができた。

 

 

駐車場の場所を尋ねると、どうもこの場所自体が、あまり外部者がうろつく場所ではないようで、オバチャンは怪訝な顔をしながら、すぐ後ろの壁を叩いた。

 

すると、防火用扉と思っていた鉄扉が横にスライドし、向こうに駐車場が見えた。オバチャンは壁を叩いたのではなく、扉の横のスイッチを押したのだった。

 

 

建物の中ではとっくに深夜のような暗さ、静けさだったが、車で地上に出てみれば、まだうっすらと空が明るかった。

病院前のバス停には何人もの人がおり、正面玄関の前では守衛さんが職員さんと立ち話をしている。

 

にぎやかな日常に戻ってきた。時間が動き始めた。そう感じたのを覚えている。

 

 

二度目は、つい2ヶ月ほど前のことだ。

 

いわゆる配偶者が、夜中に猛烈な腹痛に襲われ、大病院の救急外来に駆け込んだ時だ。

 

深夜ではあったが、一通りの手当が終わるまで一時間ほど待合で待機し、その後、数泊ほど入院になるということで、取り急ぎの荷物を自宅に取りに帰った。

 

 

救急の処置室から、看護師に先導されて病棟まで行き、いわゆる配偶者と着替えなどの荷物を病棟看護師に引き渡すと、さて、私はまた、病院内で一人になった。

 

一度目の話でもわかるように、仕事柄、初見で無人の病院は慣れているが、さすがに深夜、必要な場所以外は真っ暗で、さらに建て増しなどもされた大学病院なので、ルートがかなり複雑になっており、手こずった。

 

来るときは看護師の先導で、おそらく一般人が通らないルートで案内されたため、一定の場所から先はセキュリティがかかっていて入れない。

 

仕方ないから、真っ暗だろうがなんだろうが、一度、一階の正面玄関に出ようとエレベーターに乗ったのだが、一階のエレベーターホールは、業者が詰め込んだであろうベッドシーツやら何やらがカートでびっしりホールを埋めていて、エレベーターから降りられない。

 

仕方がないので地下に…というところから、私は再び、異空間に足を踏み入れてしまった。

 

 

真っ暗で、どの出口から外に出ても、敷地内の道に出るだけで、それだけではどちらに歩けば敷地の外に出られるかわからない。

こんな時間に部外者がうろつくのも、違った問題が起きそうなので、また建物内に引き返す。

 

そんなことを繰り返しながら、時折、外の道の標識を見ながら方向確認をしていたのだが、どうやら、徐々に霊安室方面に向かっている自分に気付き、いよいよ焦りが強くなってきた。

 

念の為に申し上げておくと、オカルト的に怖くなって焦ったというのではなく、霊安室があるということは、おそらく敷地の内側に向かってしまっているのではないか。一般人が使用する出入り口からは離れていっている、という認識だった。

 

もちろん、こんなタイミングで霊安室の前に出てしまうのも嫌だったが。

 

 

これは強行突破せねばならん。

そう思い、歩道がなく、明らかに関係者の車の出入りに使われるだろう道を強引に進み、しばらく歩いたところで、大学側の正門に出た。

 

門を出た向こうの方に救急受付の守衛さんの詰所の灯りが見え、あぁ、帰ってきた、と脱力した。

 

 

門を出たところで、空が明るいことに気付いた。

中をウロウロしていた時は、門を出る直前までは、深夜のような暗闇にいたと思ったが、もはや夜が明けていたのである。

 

 

というわけで。

 

夜に病院で孤独に迷う、というお話。

 

ピンチとは違うけれど、日頃にない場所で、日頃にない迷い方をした。

 

まさに、異空間とか、パラレルワールドとか、そういう別世界に迷い込んでしまったかのように、見つからない出口。

 

 

逆に言えば、私のピンチにまつわる話など、その程度である。

時の流れも変わると思う。