手品やトリックは、思いがけない「虚をつく」ことが大切だ。
例えば、相手が私の右手の動きに集中している間に、左手でタネを仕込む。
そのためには、巧みに「右手に集中する環境」を作らないとならない。
それは、トークだったり、わざと身振りを大きくして注意をひくなど、やり方は様々だ。
時には、トリックを仕掛ける本人自身も、気付かなかった、騙された、という芝居が必要になる。トリックというのは奥が深い。
それを踏まえて、今、この環境を考えてみよう。
我々はスーパーの中にいる。
入り口から見て、一番奥の壁際にいる。
今、ここで私が、いい音でオナラをしたらどうだろうか。
聞こえた人は、こちらを振り向くだろう。明らかにオナラの音であるほど、そうだろう。
しかし、私自身も、同じタイミングで後ろの壁際の冷蔵庫を振り向いたらどうだろう。
彼らが振り向いたら、やはり冷蔵庫を振り向いている私がいるのだ。
そう、ここがトリックなのだ。
私も、なんかオナラっぽい音がしたぞ?と振り向いた「被害者」を演じていれば、自然と私は容疑者からはずされるのだ。
そして、音源に一番近いだろう場所にいる私の目線を追う。そして、そこには冷蔵庫が鎮座している。
この瞬間、「誰かがオナラをした」から、「冷蔵庫から異音がした」に事実がすり変わるのだ。
どうだい、これがトリックだよ。
だから、君もそれに合わせて振り向いてくれないと困るんだよ。ばれてしまう。
次から、たのむぞ。