帰宅中のバス。
久々に、座ることができた。
中途半端な時間になってしまったせいか、やけにバスがすいている。が、さすがに全席埋まったか。
かわいそうに、たった1人の若者だけが、座れずに立つことになってしまった。
まぁ、これはいわゆる「明日は我が身」であって、必要以上に同情する必要はない。
全ては巡り合わせなのだ。
だが。
なぜ、私の横に立つのだ。
これだけ広く、ドア際で寄りかかることもできるのに、
なぜ、私の横なのだ。
あれか。
この何十人と乗っている乗客の中で、私が一番先に降りそうか。そういうことか。
わかっていないな若者よ。
このバスの始発駅はどこだった?
そう、○○駅だ。
おしゃれで人気の街とか言われることもある、○○駅だ。
このバスはどんどん○○駅から遠ざかるが、単純に考えて、降りるバス停が近ければ近いほど、お金持ちだ。
地価だのなんだの大人の事情があり、同じ面積の土地でも、場所により金額が違うのだよ。人気の街、駅に近いほど、それは高額になる。
もっとわかりやすく言えば、同じ広さの部屋でも、家賃が違うということだよ。
それを踏まえて、車内を見渡してみるといい。そのうえで、私を見てみるがいい。
誰が「真っ先に」降りるかは、そういう所をしっかり見定めねばならぬのだよ。
そう、この中で、すぐ降りそうな客ランキングに、私がノミネートされると思うか?この面々の中にあっては、永遠に乗っていそうな部類だろう私は。
だがな、若者。
私だって、そりゃいつかは降りる。
永遠にバスに乗り続けるなど現実であるわけがないだろう。いれば、それは幽霊ってやつだ。このバスに憑いているのだ。
このバスの終着駅はどこだか知っているか?
そうだ、△△駅だ。
つまりこのバスは、○○駅と△△駅を結ぶ路線なわけだ。
△△駅は知っているか?駅周辺の再開発が進んでいて、知名度は○○駅には及ばないが、なかなかの人気だぞ。
先ほどの大人の事情に照らし合わせると、ある場所を境に、また地価だの家賃だのは上がってくるということになる。
つまり、最後まで乗っている人もまた、お金持ちだ。
どうだ、私はどう見える。
すぐ降りそうにも、終点まで乗っていそうもないだろう?ちょうど真ん中で降りそうだろう?
そうだよ、まさしく真ん中だよ私は。
つまり、そういうことだ。
座りたいなら、すぐ降りる客を見定めることだ。すぐ降りる客か、最後まで乗っている客かは、座りながらやっていること、持っている荷物などから判断するといい。
「ちょっとそこまで買い物に」風な荷物を持っているとか、何もしないでやや前のめりなんかだと、もしかしたら早く降りるかもしれないぞ。
だから、あれだ。
私の横に立つんじゃない。
空きそうな席を見定めて、移動するといい。
私からの忠告だ。
あ、もう降りるの?