我が家には、異世界モノが好きな女子がおります。
彼女の趣味は、居間にある姿見、鏡越しに我々を見つめることです。
おそらく、鏡越しに写る我々は、人の形(ナリ)をしておらず、何か、異形の者に見えるのかもしれません。
しかし、鏡越しに「視ている」ことは、我々も気付くわけで。
深淵を覗くとき、深淵もまたこちらを覗いている、というやつです。
鏡越しに目が合うと、彼女はしばし硬直し、目を丸くし、我々から視線を外せなくなる。異世界からの呪縛のようなものであり、妖しい魅力のようなものも含んでいるのでしょう。
呪縛を解いてやると、ちょっとほっとした顔をしながら、取り繕うように私の膝までやってきます。