昔、渋谷への道を聞かれたことがあります。
渋谷はこっちですか、と、中年から老年手前ぐらいの男性に聞かれたんだったと思います。
そこは、渋谷まで電車で30分程の場所で、歩いていくにはあまり現実的ではない場所でした。
健脚な方であったとしても時間はかなりかかってしまいますし、身なりからも、歩くことが目的、つまりウォーキングのようには見えず、私は面食らってしまい、はい、と答えるのが精一杯でした。
その人が言う「こっち」は、確かにおおまかには合っていました。ただ、一本道ではないので、またどこかで道を尋ねることにはなると思いますが。
スマホが普及しているような時代ではありませんでしたが、世の中には地図というものもありましたし、なぜあの場所で、地図もなく歩いて渋谷に向かっていたのかがわかりませんでした。
なんせ、交差点で脇道を覗けば、見える距離に並行して電車が走っているのです。国道沿いだったので、もしかすると電車の音は車の走行音でかき消されていたかもしれないですが、道に迷えばキョロキョロするでしょうし、そうしたら電車が目に入る。
電車に乗らなくとも、線路は道標になります。
そこは駅が近かったので、よっぽど駅を教えたほうが良かったかな、と、後から思いましたが、とりあえず一言返すのが精一杯で、その人も、返事を聞くなり歩いていってしまった記憶があります。
人には様々な事情がありますからね。
どこからであっても、渋谷に向かって歩くことがいけないことでもありません。
まぁ、今の自分なら逆に、健康のためにとってもよろしい、と思ってしまいそうですが。
そんな私は、人混みが嫌いなので、渋谷なんぞは車で通りすがる以外には、もう十年単位で訪れてはおりません。
さっきの話とは別の場所ですが、同じく電車で30分程度の場所に住んでいるのですがねぇ。