好きな匂いとか、空気がある。
気温や、湿度、時間帯なんかも絡んできたりする。
いつかこういう感覚もなくなるものかな、と思っていたけど、むしろ年齢を重ねるごとに、強く感じるし、求めるようになった気がする。
考えてみれば、年齢を重ねるほど、経験は多いのだから、懐かしさや哀愁のようなものを感じるきっかけも増えるというものだ。
年齢を重ねるほど、戻ることの出来ない時代に懐かしさを感じ、その時代の中に、今よりもみずみずしい自分がいた、という、哀愁のような感覚を味わう頻度は増える。
今朝方、用事があってコンビニに行ったのだが、私の地方はまだ台風は近くなく、それでも、むせ返るような湿気を含んだ朝の空気に、どこか懐かしさを感じた。
子どもの頃の感覚なんだろうけれど、なんだろう、夏休みのラジオ体操とか、中学時代の部活とか、そういう時に感じていた湿気なのだろう。
そして、湿気があると、匂いも乗る。
たぶん、この湿気に含まれる匂いのどれかに、刹那的に懐かしさを感じたのだろうが、どの匂いを、いつ、どこで感じたのかまでは思い出せない。
ただ、確かに、こんな湿気の中、こんな匂いを感じていた子どもの頃の自分がいたことだけがわかる。
ちなみに、クリーニング屋の匂いは、私の中で、そのような匂いの代表である。
生まれた時から1〜2年ほどであったが、私が暮らしたアパートの1階が、クリーニング屋だったらしい。
いつだったか、母に「この匂い、妙に懐かしいんだよね」と話した時、教えてくれた。
ぼんやりとだが、自分の最期は、懐かしい匂いや空気、景色に包まれたいと思うようになっている気がする。
人間到る処青山あり、とは言うが、どうも自分は、一所懸命タイプのようである。