いわゆる配偶者が、なんか変なことを言っている。
だから、安物のワインはやめろ、と、いつも言っているのだが、まぁ金が無いので、買ってくるのはけして高くはないワインばかりだ。
本人は認めないが、ワインだと、酔い方の質が悪い。呂律は回らなくなっているし、話は通じなくなるし、正直、ワイン自体、禁止にしたいぐらいの面倒っぷりである。
せっかく一緒に飲んでいて気持ちよくほろ酔いになっても、ドン引いて酔いも冷めてしまう。
ちなみに、私自身もワインは駄目で、家でも外でも、飲まない。同じように嫌な酔い方をするし、翌日に持ち越してしまうことも多々あるからだ。
が、嫌いなわけじゃない。
いわゆる配偶者も、だから、やめときゃいいのに買ってきて、話が通じない宇宙人のようになっている。
トイレに、おじさんがいるんだそうだ。
で、なんか作曲のアドバイスをもらったらしく、こうするといい、ああしたい、などと言っていたが、さすがに言っている意味もわからず、おじさんの身元も不明なので、スルーしておいた。
他にも、金網の女子、なる人がいるらしく、何をどう絡んだのかはわからんのだが、あとでベッドに来るらしく、つまり一緒に寝るということだろうか。
どうせ、明日起きれば覚えていないのだろうが、トイレにおじさんがいるとか、金網に囲まれた女性がいるとか、信じなくても気持ちはよくない。
それに、いわゆる配偶者は、過去にそういうセンスがあった、とされる人なので、そういう能力が今いきなり復活したとか、酒のせいで一時的に感性が鋭くなっているとかだと、ちょっと困る。
一緒にいるからには、私自身、そういう現象に立ち会って(?)きているので、何か害があったら面倒くさいなぁ、と思ってしまう。
もちろん、そういう存在に対し、撃退したり退治したり、まして説得して帰ってもらったり成仏してもらったりする能力は持ち合わせていないので、なるようになるしかないが、とにかくそういう存在から余計な影響は受けたくはない。
そんな話をして、いわゆる配偶者はベッドに潜り込んだが、リビングで一人、スマホをいじっていると、キッチンのほうで、食器が鳴った。
積み重ねて置いてある食器が、下から突き上げを食らって浮いた、みたいな音だ。
当然、人も猫もいない。
隣の部屋からの衝撃でもあったか、と思ったが、キッチンの隣は共用階段の下の管理用物置で、中はガランと何もないので、衝撃を受けようもない。
こんなことは、信じるか信じないかは自由なわけだが、「そういう話」を聞くと、とたんにこれである。
人の、そういう疑い、恐怖心がそういう存在を呼ぶと聞いたこともあるので、気にはしないつもりだが、関連付けてしまうと、気持ちの良いものではない。
だから、安いワインはやめろ、と、言っているのだ。
本人というより、私が面倒なのだ。