記憶を失くす薬。
つまり「忘れて」しまう薬が研究されているらしい。
ピンポイントで、消したい記憶が消えるのか、まではわからないが、それを目標に研究をしているようだ。
マウスでの実験では、それなりの効果が見えた、みたいな記事だったのだが…。
これ、臨床試験は難しそう。
うっかり記憶消しちゃいましたとか、ちょっとカオスでは。
人生の中でも特に重要と位置付けられる約束とかイベントの記憶を消されてしまって、人生が狂うとか。
大切な人の記憶が消えてしまって大喧嘩とか。
消したい記憶だけが残ってしまって、辛さのあまり心を病んでしまうとか。
治験に参加しているという記憶を消されて、どこだここは!離せコノヤロウ!みたいな。
需要はあるんだと思う。
まっとうな意味で、そういう処置が必要な場面もあると思う。
でも、都合のよい記憶を気軽に消せるようになってしまったら、社会の混乱はすさまじいものになりそうだ。
人間は過ちを犯す生き物だから、研究段階で想定される「悪用」を想定しつくしても、ある程度の時間が過ぎると、その恐怖より興味が勝ってくる。
そのうち、処方箋持ってけば薬局で買えるようになり。
ジェネリックが発売され。
同等の効果が得られる薬が処方箋なしで買えるようになり。
そうなったら、どれだけの人が手をのばすだろうか。
辛い記憶を消す人もいるだろうけれど、罪の意識から逃れるために服用?接種?する人もいるはずだ。
さらには、完全犯罪まであと1歩、残る証拠はこの頭の中の記憶だけだ!となれば、犯罪の記憶を消し、完全に罪を闇に葬り去ることもできるかもしれない。
今はあまり政治家からも聞こえてこないが、
「記憶にございません」
を、まさに完璧にこなせることになる。
そして、心地よい記憶だけを持った人が巷に溢れ、自信過剰、意識高い系、天に選ばれし者の巣窟に。
少し妄想が先走った。
自分の身に置き換えて考えてみよう。
果たして、私には消したい記憶などあるだろうか、と考えてみた。
多分、消したい記憶の方が多い。
黒歴史が長く続いている。なんなら今もまだ黒歴史を紡いでいるやもしれない。
消したい記憶を気軽に消せたら、果たして自分には、何年分の記憶が残るのだろうか。
体年齢はオジサン!
記憶量は小学生!
いやぁ、こわくて消せないっすわ。